26. 10月 2000 · [EPISODE 15.5] 俺の翼が・・・ はコメントを受け付けていません · Categories: 過去の四方山Episode1〜

11/24、E.クラプトンの名古屋公演へ、某楽器店社長・クニオさんと行ってきました。演奏した曲に好き嫌いはあるかもしれませんが、内容は申し分なく良かったです。今回のライブでクラプトンは新しいシグネイチャー・モデルを使い、音も構えるスタイルもバッチリ決まっていました。思わず「俺も買ってクラプトン・カラーに塗ってやろうか」と一瞬気の迷いも生じましたが、「どうせアンプもギターもフェンダーの特注品。俺の四畳半じゃ同じ音が出る訳がない」と冷めた目で見ていました。

話は急にライブ終了後に変わります。名古屋で彼の公演があると、必ず全国から常連のみなさんが集まって来て、コンサートの帰りに「南蛮屋」という店で大セッション大会が繰り広げられるそうです。初参加の私・ジンは、そんな事情はつゆ知らず、当日の夜の新幹線で東京にトンボ帰りするエリック・秋山クンを駅まで送っていくとばかり思ってクニオさんの車に乗り込みました。駅の改札で秋山クンを見送ると、車は一路クニオさんの楽器店の方角へ。「名古屋の夜は早い」とよく揶揄(やゆ)されますが、この時間の名古屋の街の灯はまだ明るく、ビルのネオンが車窓をきらびやかに流れていきます。ふと気づくと、いつのまにか店を通り越している。ほどなく名古屋随一の歓楽街・今池の一角で車を降ろされました。

 

以前二回ほど来たことがある「南蛮屋」では、クニオさんはかつての常連。

クニオさんが悠然と一番前のテーブルに陣取るやいなや、さっそく店長のジュンさんが手を揉みながらあいさつに来ました。クニオさんが東京からのメンバーをジュンさんに紹介し、最後に僕を紹介すると、じゅんさんは「覚えてるよ君ぃ。前によく来てくれていた方だよね。ええっと、そうだエマニエル坊やだ!。エマニエル君だよ」と勝手に命名して店の奥に消えていきました。私・ジンは、ほとんど初対面なのに急遽常連に仲間入りし、 しかもエマニエルという称号まで与えられ、とあるメールマガジンにまで登場することに。

さてテーブルについた東京遠征組、まもなく合流する福山・大阪連合が到着する前に、おいしいところは頂いておこうと演奏を始めた。ジンも、わくわくしながら指名されるのを待っていた。こういう場で「オレおれ!」と率先して出て行くのが苦手のジンは、ひそかに出番を待った。「そう、おれにはあの曲がある」。頭の中でその曲のソロ・フレーズがいくつも鳴り響いた。

 

まずクニオさんに呼ばれたのは、クニオさんの二十年来の友人でもある、オーディオ・井槌さんだ。「さあ、何をやろう(演奏しよう)」。「はじめはゆっくりな曲がいい」と何曲かのタイトルが出たとき、何気なくクニオさんが言い放った曲名に、私は固まった。「じゃあ”リトル・ウイング”!」。この曲こそ、何度も頭の中でフレーズが駆け回った曲だった。ジンが唯一ソロを弾ける曲でもあった。「あ~ぁ~」声にもならないくにぞうのため息が、店内の犬騒にかき消された。

何とか冷静になり、気を取り直す。「福山・大阪連合が来たら、また何食わぬ顔で始めればいい!」。ジンの演奏する番がきたが、仕方なく”警官を撃った”をやることに。慣れない曲に、慣れないEX’58。ハイポジションまで指を滑らせると、おいしいソロが弾けるポジションを通り過ぎている。「あ、これはエクスプローラやった!」。何とか元のロー・ポジションに戻ってソロをつなげて乗り切る。

演奏後、”足だけ”きれいでその足を見せつけるかのような真っ赤なショートスカート姿の関西弁のおばちゃんが話し掛けてくる。クニオさん達はさっさとステージを降りたので、彼女が話し掛けているのはステージに残る私しかいない。気づかないフリをしていると、「ねえ、ねえ、黒い帽子のひと~」としつこい。こちらの返事も聞かずに続ける。「ねえ、何で眉間にしわ寄せて弾いてんの~?ねえ?」。苦笑いしながらジンは小声でつぶやく。「おいしいところ持っていかれたからや!」

まもなく福山・大阪連合が合流。福山でブイブイいわせているらしい和田さんの演奏は素晴らしい。少し飽きてきたのか、まもなくメンバー交代。そこで出てきたお客さんが間違って別のコードを鳴らした。和田さんは少し怒った口調で「それ”リトル・ウイング”じゃねえか」と言ったあと、ふと我に返り「ん?じゃあそれいくか」~~じゃーん、じゃ・じゃ・じゃーん・じゃ・じゃ・じゃーん~~無情にも、本日二度目の同じイントロが店内に響きわたる。

「何でや!僕の翼を返せ~っ」  こうして名古屋の夜は更けていった。

「南蛮屋」は楽しい店です。こんどはギター持参で行くぞ。お礼まいりじゃ!

1曲目はぜったい”翼”                   おしまい

 

 

※同席していたジェフロックス・松原さんから来たメールも掲載しておきます。

 

裏四方山読ませていただきました。なるほど、翼の折れた天使エマニエル長谷

川くんは実はLittle Wingを弾きたかったのですね。でもまだまだ若いねえ、長谷

川くん。ぷぷぷ。苦手な未知な曲を弾くのもまたセッションの楽しさだよん。

ただ確かにギターはマイギターに越した事はないですね。私も次回の名古屋遠

征にはギター持参で行きたいと思います。

ではまた。ジェフロックス・松原