今回は、Go Another Wayアルバムの内容と、1stアルバムから仲良くしていただいている増渕英紀氏によるライナーノーツをご紹介いたします。
増渕氏は、1970年代からプロデューサー、コンサート企画、音楽雑誌の記事等、今も大活躍されている音楽業界の重鎮のお一人です。 先輩、いつも本当にありがとうございます。
※2月後半に発売予定のレコードには、このライナーノーツが付きます。

■KUNIO KISHIDA / Go Another Way
1. GO ANOTHER WAY (Macon ver.) 4:34
2. HOURGLASS 5:07
3. IN MEMORY OF DADB 5:30
4. GO ANOTHER WAY (Tyo ver.) 4:28
5. MARY’S BOOGIE 7:15
6. DEAR OLE’ FRIEND 3:34
* MUSICIANS *
KUNIO KISHIDA: All Electric, Slide Guitars, Acoustic, 12 Strings, Dobro and Bass
– Macon, GA –
PAUL HORNSBY: Piano (1, 2)
JERRY WASLEY Jr.: Bass (1, 2, 5)
EDDIE STONE: Hamond B-3 (1, 2)
GARY PORTER: Drums (1)
– Tokyo, Japan –
JAMIE OLDAKER: Drums (5)
ARMIN LINZBICHLER: Drums (2)
ADAM DEMBY: Drums (1, 4)
TOSHIHIDE UTO: Keyboards (4)
RISA OKAMOTO: Bass (4)
All Songs written by KUNIO KISHIDA
Produced by ALLEN ISAACS with KUNIO KISHIDA
Executive Producer: KUNIO KISHIDA (Nancy’s Co., Ltd..) Tokyo, Nagoya Japan
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『乾いた土の声。』
ジョージア州メイコンにある伝説のキャプリコーン・スタジオを始め、東京・名古屋でのレコーディングを経てアメリカ南部のミュージシャン達、日本のミュージシャン達と制作、集結したアルバム。
故ジェイミー・オールデイカーとの最後のスタジオ・セッションも収録。
1959年製 Gibson Les Paul Standard, 1954年製 Fender Stratocaster はじめ、1964年製 Firebird, 1955年製 Telecaster などのヴィンテージギターを使用。極上の音が鳴り響く。
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6曲収録のNEW EP初リリース!デジタル配信、CDショップにて!
2026年2月にはレコード発売予定!
920 RECORDS 920-002
国内盤 / CD ¥2,035 (税込), レコード ¥3,850 (税込)
Nancy Co., Ltd, Vivid Sound
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■増渕英紀氏によるライナーノーツ
KUNIO KISHIDA / Go Another Way
★クニオ・キシダの『X 10』以来、約3年ぶりとなる6曲入りのミニCDが届けられた。曲数こそフル・アルバムよりも少ないものの、何か凄い凝縮された充実感のようなものを感じさせる作品に仕上がっているように思える。
キーボードは殆んどクニオ・キシダの相方とも言える存在のチャック・リヴェールではなく、今回はポール・ホーンズビーが起用されている。ポールはデビュー作(自主制作盤)『南水~Swamp Waters』(2002)、2作目の『Alabama Boy』(2005) に参加しているが、新しいところでは『Brotherly Love』(2018) にも参加しているベテラン・ミュージシャンで、サザン・ロック・ファンならキャプリコーン・レーベル時代にマーシャル・タッカー・バンドやウェット・ウイリーを手掛けたプロデューサーとしての活躍でお馴染みかと思う。『Brotherly Love』ではポールのオルガンの音がレベルが低く、ちょっと奥まった所で鳴っていたが、今回は前面に出てバランス良く聴こえて来るのが気持いい。 そのポールだが元はと言えばオールマン・ブラザーズ・バンドの前身でもあるアワー・グラス(The Hour Glass)のメンバーとしても知られる。
ちなみに当時のアワー・グラスのメンバーはデュアン&グレッグの兄弟にピート・カー、ポール・ホンズビー、ジョニー・サンドリンという布陣で、グレッグの作品でオールマン初期の名作として知られる「It’s Not My Cross To Bear」をすでにレパートリーとして演奏していて、2004年にリリースされたアワー・グラス時代の未発表曲を集めたコンピレーション盤『Southbound』に収録されている。
ポールに関してもう一つ思い出されるのは、2015年にメイコンにある“オールマン・ブラザーズ・ミュージアム”での野外ライヴ。
セッション・メンバーはクニオ・キシダの他に、キーボードがポール・ホンズビー、ベースがクニオ・キシダの盟友であるジェリー・ワスレイ、そしてドラムスがカウボーイやT.S.S(トミー・タルトン、ジョニー・サンドリン、ビル・ステュワートからなるユニット)で活躍したビル・ステュワートという凄いメンツ。
確かポールとのライヴ・セッションはこれが初めてのこと。ポールがクニオ・キシダと一緒にライヴを演れたことを凄く喜んでいたと聞かされた。
当時 facebook にその模様がアップされていて、そのライヴ・セッション写真を見て“オオっ!!”と、いたく感動したことを良く覚えている。
収録曲の中で印象的なのはオープニングを飾るアルバム・タイトル曲でもある「Go Another Way」だろうか。クニオ・キシダならではのスライドがメロディを奏でるスタイルが何と言っても心地良いし、考えて見るとアメリカでもあまり見かけることの無いスタイルだと思える。キャッチーなリフと共にこれこそクニオ・キシダの独壇場とも言うべきインスト作品に仕上がっている。イントロで聴けるポールのニューオリンズ風のピアノもいい!
続く「Hourglass」はハード・ドライヴィンなスライドと、どこまでも長く伸びるスライドが聴きもの。多分、この曲は先にも触れたオールマンズの前身である“Hourglass”へと思いを馳せた作品でしょう。スライドとオルガンがメインという構成にもそんなことを踏まえたところが感じ取れる。
「In Memory of DADB」はタイトルからしてつい「In Memory Of Elizabeth Reed」を連想してしまうが、“DADB”とは Duane AllmanとDickey Betts の二人のことだそうな。これは思わず納得のタイトルだが、ここは一つクニオ・キシダの両雄への想いを汲み取って思い入れたっぷりのメロディアスなギター・ソロにじっくりと耳を傾けたい。ちなみに、ここまでがメイコン・ヴァージョンとなっている。
後半は東京ヴァージョンの「Go Another Way (Tokyo ver.)」で始まるが、ライヴの積み重ねでヴォーカリストとしても存在感を増したクニオ・キシダが、ここではレコーディングでの処理で囁くような歌い方にしているが、極めて個人的な受け止め方かも知れないが、これはメロディを浮き立たせるという意図的な手法ではないかという印象を受ける。メロディ楽器としてヴォイス、そんな役割りなのではないだろうか。それにしてもフェイドアウト直前まで鳴り響くスライドが素晴らしい!
「Mary’s Boggie」は、シカゴ・スタイル、或いはローウェル・フルソンの「Tramp」のようなノリの良い導入部で入りながら、歯切れの良くて長いギター・ソロを挟んで、いつの間にかサザン風になって行く辺りが何とも言えない。
「Dear Ole’ Friend」はディランが演りそうなスゥイートでしっとりした情感豊かなバラード。これで閉められると長い余韻があって心に沁みる。つくづく心憎い見事な構成だと思う。
2025年12月 Stay High Always!
(HIDEKI MASUBUCHI/増渕英紀)