26. 10月 2000 · [EPISODE 23] お気楽な仲間達の巻 はコメントを受け付けていません · Categories: 過去の四方山Episode1〜

(今回は、夏目漱石の「坊ちゃん」風な口調にしました。)

 

昨日、お気楽な仲間が集まって、一昨日食べぞこなったカキフライを食べに行った。カキフライは予想通りおいしく全員”ウーム、マンダム!”って感じ。ちょうど、楽器談義をして帰ろうとした時に、エレクトロハーモニクスの社長が外国のディーラーを連れて入ってきたので、彼らに席を譲ってその場を去ることにした。彼は、非常に律儀な人で、ナンシーはエフェクターが世界一売れない店にも関わらず、いつも昔のよしみで新製品案内を送ってくれるのだ。感謝、感謝。

帰り道。渋谷ドンキホーテの前を通った時にI氏がこの店に蓄音機を模造したクラシックなスタイルのレコード・プレイヤーがあったことを思い出し、ファッションヘルスの呼び込みお姉ちゃんに話し掛けられて一人入ろうか?と迷っているB.B.田付氏にその事を話したから、さあ、大変!この男は、最近みんなにレコード愛聴菌を蔓延させている張本人だからだ。店へ入っていって、それを見るや否や、笑顔の似合わない渋柿顔を無理やりニーッとさせて、手揉みしながら「社長、これ買うて帰りまひょ。迷う事あれへんでー!」とエセ関西弁で迫ってくるのではないか。背後で「うひょひょ、うひょひょ」と面白がる谷口氏は、眉毛を思い切り上げながら「いや~、これをナンシーに置いたら昔の音が聴けますよ!」と三重弁なまりで後押しする。まさに挟み撃ちである。この男もレコード愛聴菌に侵されている男の一人だからだ。

もう買う気になったが、ここで「買う」と返事をしたら面白くない。とりあえず東急本店前にある紅茶専門店サロン・ド・ニナスへ行って”デュマン”というデュアンに似た名前の紅茶を飲むことにした。閉店の11時までレスポールやブルースのアルバムの話で盛り上がり、帰る頃にはもうすっかりレコード・プレイヤーのことは忘れていた。店を出てまたドンキホーテの前を通リ過ぎた時、B.B.田付氏が「あれっ、買わないすか~?」とここぞと話し掛けてくる。さすがに忘れていない!もうどうでも良くなっていた私は「今、ちょっと考え中。」と答えて通り過ぎようとしたら、「何で・・・?我々はギターを買うとき迷わないでんがな!そうでっしゃろ。」とまたエセ大阪弁が始まった。しょうがないので「そりゃそうだ!そうでんな。」と買ってナンシーへ戻った。さっそく、店のバックヤードにセットしてフェイセスのライブ盤を聴いてみた。中域しか出ないないが、1万円何がしの割には本当に昔懐かしい音がする。30年前学生時代にアパートで聴いていた音と同じだ!聴き忘れていた音だ! こりゃあ、しばらくはまってしまいそうだ。

 

今、「今日はB.B.Kingのジャングルを持ってきた。」とB.B.田付氏がやって来た。皆さん、彼がレコードに合わせてギターを弾いている後ろでこの四方山話を書いているのを想像してもらいたい。笑える。彼が家へ帰ってこれを読むのを想像すると実に愉快だ。

 

余談1:音楽を楽しむ場合、だいたいリスナーかプレイヤーに分かれる。両方を凝って追求し出すととんでもないことになる。どちらも妥協を許さないからお金がいっぱいかかるからだ。だから、自分はどっちをメインにするか決めたほうが良い。※このアンティックなレコードプレイヤーは害がなくて良い。

 

余談2:B.B.田付氏はちょっと変わっている。何が変わっているかと言うと、

通常、楽器屋へ来る目的は、楽器を買いに来るか、探しに来るか見に来るかである。ところが彼は、それ以外にSMクラブに来ているような気持ちでいるようだ。私に、からかわれれば、からかわれるほど嬉しそうな顔をする。多分、大手商社の管理職をしている関係で、いつも会社で部下に睨みを利かす役目をしているため、心のバランスをとるためにいじめられたくなっているに違いない。見かけに寄らず実に優しい男だ。彼の立場上、その手の店へは行けないのでここへ来るのであろう。だから彼には特別な接客をしているつもりだ。ただ、二人の会話を聞いて、「今日の社長、機嫌悪いの?」と心配して仲に聞いてくる人があり、この頃はできるだけ他の人がいない時にいじめてあげるように心がけている。

 

おしまい。